落ち穂ひろい

このところ、カラヤンの新しい音源が全く出てこない。

以前はベルリン・フィルの海外公演やザルツブルク音楽祭のドキュメント音源が、たくさんCD化され発売されたが、昨年2月にCD化された、ウィーン・フィルとの1964年ブカレスト公演のモーツァルト交響曲第40番とブラームス交響曲第1番から、1年も経ってしまった。

カラヤン没後ライブ音源とは別に、ドイツ・グラモフォンに正規に録音され、収録当時に発売されなかった音源がCD化されたことがあった。

録音順に並べてみると次のようになる。

1966年8月17~23日-ヴィクトリアザールサンモリッツ
J.S.バッハ/ヴァイオリン協奏曲 第1番イ短調  BWV.1041

        ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調  BWV.1042

        2つのヴァイオリンのための協奏曲  BWV.1043
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団クリスティアン・フェラス(Vn)/ミッシェル・シュヴァルベ(Vn)

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1969年1月、4月-イエス・キリスト教会、ダーレム
ベートーヴェン/祝賀メヌエット WoO3

                             騎士舞踊のための音楽 WoO1
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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1969年4月28~29日-イエス・キリスト教会,ダーレム
J.シュトラウスポルカ「愛の使者」作品317

                                ポルカ「浮気心」作品319

ヨーゼフ・シュトラウス/ワルツ「天体の音楽」
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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1972年2月17日、27日-イエス・キリスト教会、ダーレム

            3月-祝祭大劇場、ザルツブルク
ギリシャ国歌

デンマーク王室賛歌
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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1972年8月15~21日/フランス教会、サンモリッツ
ヴィヴァルディ/協奏曲集「調和の霊感」作品3より第1番 ニ長調  RV549

                                                                                      第4番 ホ短調  RV550

                                                                                      第7番 ヘ長調  RV567

                                                                                      第10番 ロ短調  RV580
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団/ミシェル・シュヴァルベ(Vn)/トーマス・ブランディス(Vn)/レオン・シュピーラー(Vn)/ハンス=ヨアヒム・ヴェストファル(Vn)/エーベルハルト・フィンケ(Vc)/ホルスト・ゲーベル(Cemb)

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このようなお蔵入りになっていた音源は、外に存在しないのだろうか?

カラヤンの録音セッションの写真をみると、指揮台の脇にモニタールームと直結するホットラインと『録音中』を示す、赤いランプが立っている。

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カラヤンの録音セッションでは、ほとんどの時間マスターテープを録音状態のままにしてあったとも仄聞する。

ひとつの楽曲が完全でなく部分的でも、わずかの時間でも、その録音過程の音源が公開されることはないのであろうか。

カラヤンのだみ声とオーケストラ楽員のやり取りでも、興味深い音源になると思う。

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わずかでも、「落ち穂ひろい」が行なわれることを期待したい。

 

 

 

レオンティーン・プライス/クリスマス曲集

カラヤンの数ある録音の中でも、12月のこの時期、特に売れ続けている一枚がある。

1961年にイギリス・デッカのジョン・カルショウのチームとウィーンのゾフィエン

ザールで収録した、レオンティーン・プライスを起用した「クリスマス曲集」である。

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収録されてる曲は次の通りである。

①グルーバー(マイヤー編)/きよしこの夜

メンデルスゾーン(マイヤー編)/天には栄え

③ホプキンス(マイヤー編)/われら東方の3人の王

④民謡(マイヤー編)/荒れ野の果てに

⑤もみの木

⑥ともによろこびすごせ

⑦ウィリス(シアズ編/マイヤー編)/あめなる神には

⑧J.S.バッハ(ルター編/マイヤー編)/高き天より

⑨民謡/幼子イエス

シューベルト(サヴァティーニ編)/アヴェ・マリア D.839

⑪アダン(トゥッツァウアー編)/オー・ホーリー・ナイト

⑫グノー(サヴァティーニ編)/アヴェ・マリア

モーツァルト/モテット「エクスルターテ・ユビラーテ」K.165より「アレルヤ

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とウィーン・グロスシュタット少年合唱団、

ウィーン楽友協会合唱団が共演している。

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この年の12月に発売させるために、録音は6月3日から5日の3日間に行なわれてい

る。6月にクリスマス曲を録音するとは、歌う側、録音する側は、どんな気持ちだった

のであろうか?

だが録音から半世紀以上も経っても聴き継がれるというのは、すばらしいことである。

これらの曲の選び出しや収録順の決定にカラヤン自身は、どの程度関わったのであろうか?

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手持ちの写真の中から、カラヤンとプライスが一緒に写っているいるものを捜してみたら、この一枚があった。

ちょっと後ろ姿なのだけども、キャプションは1963年11月・ゾフィエンザールで「カルメン」録音セッションと書かれている。

ショスタコーヴィチ/交響曲第9番

カラヤンの生涯にわたっての演奏会記録にも、膨大な量の盤歴(レコーディング歴)にも、ショスタコーヴィチ交響曲第9番作品70は存在しない。

ところがだいぶ以前に、NHK-FM放送ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮チャイコフスキー音楽院管弦楽団の演奏とする、ショスタコーヴィチ交響曲第9番の音源が放送されたことがあった。

それは1975年の11月26日の「FMコンサート/ベルリン・フィル・シリーズ」の中で、ベルリン・フィルのライブ音源放送の後に、「ベルリン・フィル物語」と題してドイチェ・ベレ放送協会提供の録音テープに解説を付けて、5回に分けて放送された最終回「さまざまな活動と未来への展望」の中でのことであった。

解説は丸山桂介氏が担当し、第1楽章のわずか40秒ほどのものであった。

カラヤン財団」は1969年から、9月のシーズンの始まりで1年ごとに、「指揮者コンクール」と世界各国の青少年オーケストラをベルリンに招きミーティングを行ない、選抜メンバーによる演奏会を開く催しを行なっていた。

この「国際青少年オーケストラ」を指揮したカラヤンの演奏会記録は、次の4回が確認できる。

1970年9月27日 ブラームス交響曲第2番

1972年9月27日 モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第5番(ダヴィツト・オイストラフ

1974年9月24日 モーツァルト/3台のピアノのための協奏曲(ポミエ/フランツ/カラヤン

1976年9月26日 ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー前奏曲

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この写真は、ベルリン・フィルのブレッター70/71年シーズンの第2号巻頭に掲載されているものであるが、1970年9月27日のブラームス交響曲第2番演奏時のものとされる。

隔年に行なわれた「指揮者コンクール」は受賞者が決定されるわけであるから、マスコミ向けの資料や写真は多く存在するのだが、選抜された「国際青少年オーケストラ」については詳しいことが全くわからない。

チャイコフスキー音楽院管弦楽団が何年に参加したのかもわからない。

ただ、カラヤンが演奏会で取り上げたことのない曲を青少年オーケスト相手に指揮する可能性はほとんどなく、ドイチェ・ベレ放送協会の間違いであると考えられる。

「国際青少年オーケストラ」について、当時参加された方、選抜演奏会を聴かれた方など、何かご存じの方がいらっしゃれば、詳しいことをご教授ください。

 

 

後援会限定・特別仕様CD盤

ザルツブルクイースター音楽祭には、発足当時から登録制の後援会があった。

会員にはカラヤンの直筆サインの入ったレコード・セットなどが配られていたが、カラヤン没後も節目の年など、折々に特別仕様のCDが製作されていたようだ。

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このCDはドイツ・グラモフォン仕様で、445 148-2という番号を持つが、一般のCDショップでは購入できない後援会会員向けのものである。

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ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、レッラ・クベッリ(S)、ヘルガ・ミュラー=モリナーリ(A)、ヴィンスン・コール(T)、フランツ・グルントヘーバー(Bs)、ウィーン楽友協会合唱団によるものである。

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これは1986年9月に、テレモンディアルによって収録され、ソニー・クラシカルで販売された映像作品から、特別にCD化されたもので、関係者のみに配布されたものである。

このほかにも、いくつかのCD盤が存在するようだ。

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ザルツブルク空港

Pointing: Flughafen — Play 24 hours

現在、世界各地にライブ・カメラが設置されていて、リアルタイムで映像を見ることが出来る。

アニフ村には、まだライブ・カメラの設置はないようだが、ザルツブルク市内中心部には、いくつかのカメラがある。

アニフ村に一番近いところは、ザルツブルク空港になる。ちょうど市の中心からアニフ村への中間地点にあたる。 滑走路は長くないので大型機の離発着は出来ず、ボーディング・ブリッヂもなく、乗り降りする乗客はゲート口より駐機場所まで歩いてゆかなくてはならない。雨の日は傘を差して行かなくてはならない。

ライブ・カメラを覗いていると、その様子もよくわかる。

カラヤンもこの空港に専用の格納庫を持ち、ファルコン10で飛行を繰り返していた。

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映像で駐機場・滑走路が雨で濡れていれば、アニフ村も降雨していて、カラヤンの墓石も濡れていることになる。

今まで何回かこの空港を利用したが、また降り立ってみたい空港である。

【新譜】R.シュトラウス/ウィーン・フィル

ご紹介が遅くなったが、今月初旬より「ザルツブルク音楽祭」のライブ音源・新譜がCDショップに並んでいる。

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【C909 151B】

ORFEO D'OR の「フェスティヴァル・ドキュメント・シリーズ」で、1964年8月30日のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との演奏会より、R.シュトラウス交響詩ドン・キホーテ」と交響詩ツァラトゥストラはかく語りき」の2曲である。

ソリストはピエール・フルニエ(チェロ)とルドルフ・シュトレング(ヴィオラ)である。

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同じソリストと曲目の組み合わせで、6月のウィーン・フィル定期演奏会(6月20日、21日、22日)が予定されていたが、カラヤンとトラブルが生じて、フルニエが降りエマニュエル・ブラベッツが替わって演奏したという演奏会から、和解をした演奏会と歴史は伝えている。

解説書にお二人の写真がないので、ザルツブルク音楽祭のプログラムより転載することとする。

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【ピエール・フルニエとルドルフ・シュトレング】

今後もライブ音源が多数CD化されることを望んでいる。