【放送用スタジオ録音】園田高弘・ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番
キング・インターナショナルより月末に予定されていた、昭和29年春にカラヤンがNHK交響楽団を客演したCD2枚組が発売になったので、早速購入してきた。
ところがこのCDに収録されているのは、日比谷公会堂で4月7-8日に行われたライブ音源ではなく、別にスタジオで録音された「放送用録音」であった。
解説書にも園田氏の著書からの「カラヤンとの出会い」という文章が転載されており、「本番とは別に、放送用の録音もあった」とあり、聴いてみると客席ノイズや拍手もないものであった。
CDショップの広告では、確かに日比谷公会堂でのライブ音源となっている。
もちろん制作側のインフォメーションをCDショップはそのままサイトに掲載するであろうから、制作側が間違った情報を伝えたことと思われる。
「放送用録音」であるならば、収録日付とスタジオ名を明らかにすればよいだけである。
2枚のCDが入っている紙ケースには、(ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番はボーナス盤の扱いで)チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」の下に表記されており「放送用録音」とは書かれていない。
これを手に取った人は、2曲が4月21日の日比谷公会堂でのライブ音源と思って購入するであろう。
せっかくの初出音源が、すっきりしない形での販売となってしまっている。
さらに驚かされるのは、ディスク面の表記で Takahiro Sonoda の名前はあるものの、どうしたわけか Herbert von Karajan の表記が欠落している。
カラヤンの名前がないディスクが流通するのは、きわめて残念である。
メーカーはカラヤンの名前が入ったディスクを作り直し、希望購入者に交換対応をすべきである。
【発売を伝えた前回の記事が、ライブ音源としているで間違った情報が広がってしまうので削除することとした。】
初出音源 1960年ベルリン・フィル/62年ウィーン・フィル フランス公演ライブ
来月の新譜予告に60年代はじめにパリ・シャンゼリゼ劇場で行われたベルリン・フィルとウィーン・フィルとの初出音源が告知されている。
スペクトラム・サウンド(Spectrum Sound)からフランス国立視聴覚研究所(ina)提供の音源として発売される、1960年4月26日と1962年4月9日の2公演のライブ音源である。
【CDSMBA 025】
1960年のベルリン・フィルとの演奏会は、ベートーヴェン/交響曲第8番と第9番「合唱」の2曲である。
4月21日から5日間かけて行われたベートーヴェン・チクルスの最終日の2曲で、「第9」のソリストは、ウィルマ・リップ(S)、クリスタ・ルートヴィヒ(A)、ワルデマール・クメント(T)、ゴットロープ・フリック(Bs)とエリザベート・ブラッスール合唱団という布陣である。
【CDSMBA 026】
1962年のウィーン・フィルとの演奏会は、ロカテッリ/合奏協奏曲第10番、シューベルト/交響曲第8番「未完成」、R.シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」とアンコールで演奏されたヨーゼフ・シュトラウスのワルツ「うわごと」で、「ツァラトゥストラ」のヴァイオリン・ソロはコンサート・マスターのヴィリー・ボスコフスキーである。
この2日とも初出音源であり、ベートーヴェンの2曲はモノラルで、62年のウィーン・フィルとの音源はステレオ録音とされ、いずれも2枚組での発売である。
ジャケットに使われている写真は、1970年の「幻想交響曲」映像収録時のものと思われる。
発売予定日は7月20日、たいへん期待の持てる初出音源の登場である。
岡山県倉敷市の旅
1966年、カラヤンは夫人を伴ってベルリンと日本演奏旅行を行い、全国で18公演を指揮した。
うち4月24日の岡山県倉敷市での様子が、下記のサイトに紹介されている。
「旅 Voyages 指揮者カラヤンが愛した倉敷の旅路」
http://espritjapon.com/voyages.php?2015032700
同日、岡山市の岡山市民会館で演奏会は行われたが、夫妻は倉敷で宿泊されたのであった。
倉敷国際ホテルや大原孫三郎氏の別邸「有隣荘」(別名「緑御殿」)や大原美術館での写真とともに、当時の詳しい様子が語られている。
また、東芝音楽工業が作製した冊子には、西日本の演奏旅行中に宇高連絡船上で楽員らとくつろぐカラヤン夫妻の写真が載っている。
【広島の原爆ドームを背景にたたずむエリエッテ夫人】
プライヴェートの写真がたくさん見つかると、当時の様子を詳しく知ることが出来る。
シュナイダーハンとの共演
membranというレーベルから "Milestones Of A Violin Legend" というタイトルで、ヴォルフガング・シュナイターハンの10枚組セットの販売が予告されている。
1枚目が1955年8月27日にルツェルンのクンストハウスで演奏された、カラヤン指揮によるベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲になっている。
ルツェルン音楽祭でのルツェルン祝祭管弦楽団との共演で、以前にもいくつかのレーベルでCD化されている演奏である。
シュナイダーハンをソリストして迎えて共演は記録上それほど多くはないが、ウィーンでの一時期カラヤンにとっても、ごく身近な存在であったはずである。
1955年はカラヤンにとって大きな飛躍になる時期で、夏のこの録音も溌剌とした演奏が冴えている。
ネットでの販売価格は10枚組で2,000円を切る価格が表示されている。
アフリカでのコンサート
カラヤンの演奏会記録を調べていると、生涯でただ一度だけチュニジアのチュニスで演奏会を行っているデータがある。
といっても、現地のオーケストラを客演指揮したものではなく、エリーザベト・シュヴァルツコップの「歌曲リサイタル」のピアノ伴奏を担当した記録である。
日付は1953年9月中旬で、日付と演奏された曲目は特定できない。
オズボーンの伝記によると、チュニス訪問は二人の夏休みの個人的な休暇旅行にすぎず、「リサイタル」は事前に予定されていたものではなく、カラヤンのヨットの繋留権をめぐるチュニジア当局との和解案として行われたものであるという。
ということは二人はイタリアのどこかの港から地中海を渡ってチュニジアに行ったのだろうか?
シュヴァルツコップは、ちょうど一か月前にザルツブルク音楽祭で、フーゴ・ヴォルフの「没後50年記念演奏会」を持っている。
8月12日にモーツァルム音楽院ホールでことであって、ヴォルフの歌曲から「さようなら」「眠れる幼児イエス」「妖精の歌」など全22曲を歌っていて、ピアノ伴奏はなんとウィルヘルム・フルトヴェングラーであった。
この演奏会での様子はシュヴァルツコップからカラヤンは聞いていただであろうし、チュニスでカラヤンがピアノ伴奏した曲目は、フルトヴェングラーに対抗してヴォルフだったかもしれないし、前後の演奏会記録をみるとミラノやローマでモーツァルトのオペラを取り上げているので、それらが取り上げられたのかもしれない。
現地の当時の新聞などを調べれば、詳しい記録を見ることが出来るかもしれないが、今のところそれは不可能である。
1931年のプログラム
ずいぶんと前からカラヤンのプログラムを収集しているが、戦前のものに出会う事が希である。
海外のネット・オークションなどで見つけるチャンスは増えているのだが、戦前のものは本当に少ない。
最近1931年7月22日のプログラムを入手する機会に恵まれた。
演奏された曲目は次の通りである。
ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲
シューマン/ピアノ協奏曲
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
R.シュトラウス/交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
オーケストラはモーツァルテウム音楽院管弦楽団、ピアノはラルフ・ロートンであった。
カラヤンの名前の表記は Herbert Karajanで、言うまでもなく von が入っていない。
この時代の写真も手元に1枚あるのみである。
【1934年・26歳のカラヤン】