ある音楽写真家の訃報

この夏、長年「音楽写真」の分野でご活躍されていたカメラマンの方がご逝去なされたのを最近になって知った。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン        ⓒ 堀田正矩

レコード芸術」誌に4期 42回にわたって連載した「名演奏家ディスコグラフィ ヘルベルト・フォン・カラヤン」と、それをまとめた ONTOMO MOOK「カラヤン 全記録を追う」の全てのジャケット写真を撮影されたカメラマンでもある。

レコ芸」編集部で幾度もお会いしたほか、ご自宅が非常に近かったため、撮影をお願いするジャケットの受け渡しや返却の際に、何度もお会する機会があった。

たいへん穏やかな口調で打ち合わせの際には、いろいろな音楽家にまつわる話を伺うことも出来た。

カラヤン 全記録を追う」のジャケット撮影は、重たい機材とたくさんのフィルムをお持ちになって来ていただき、一日がかりであったことを懐かしく思い出される。

シルバー・ジャケット(「クリスマス協奏曲集」DGG 2530 070)と、ゴールド・ジャケット(「ヴェルディ/レクイエム」DGG 2707 065)の撮影は、アルミ箔をくしゃくしゃにしてかざし、光を乱反射させる裏技を見せてもらった。

2007年春、ミューザ川崎・シンフォニーホールのギャラリーにて「写真展・私が出会った巨匠たち」が開催され、永年かかって撮り貯められた数多くの音楽家たちの写真に混ざってカラヤンの写真も展示されていて一際目を引いた。

写真展の会場ではお目にかかれなかったが、後日丁寧なお礼状が届いた。

そこには一枚のカラヤンの写真が同封されていた。

ご一緒に仕事が出来たことを厚くお礼申し上げます。

ありがとうございました。

謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 

 

 

初出音源 リリース 予告

ICA Classics より初出音源となる2枚組CDの発売が予告されている。

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【 ICAC 5142 】

曲目はチャイコフスキー交響曲第4番(1955年5月1日)、ラヴェル/スペイン狂詩曲(1955年10月18日)、モーツァルト交響曲第35番「ハフナー」・ピアノ協奏曲第23番(クララ・ハスキル)・交響曲第41番「ジュピター」(1956年2月6日)で、フィルハーモニア管弦楽団を指揮したロイヤル・フェスティバルホールでの録音である。

イギリス放送協会の収録で、この時代のフィルハーモニア管弦楽団とのライブ音源が、60年を経てCD化されるのは嬉しい限りである。

クララ・ハスキルとのモーツァルト/協奏曲第23番は大変珍しい録音になる。

1956年はモーツァルト「生誕200年」の記念年で、年頭よりカラヤンハスキルと各地でモーツァルトを取り上げていたが、第23番の録音がロンドンで残されていたことになる。

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ハスキルと1955年、ルツェルンにて 】

10月19日のリリース予定で、発売が待たれる。

プラハ公演(1966年)リハーサル風景

1966年5月、カラヤンベルリン・フィルを率いてプラハで2回の演奏会を持った。

その時の「ニュース映像」にリハーサルの様子が含まれている。

2回の演奏会の曲目は次の通りである。

5月29日 モーツァルト/ディヴェルティメント第15番

      ベートーヴェン交響曲第3番「英雄」

5月30日 バルトーク管弦楽のための協奏曲

      ドヴォルザーク交響曲第8番

この直前にはベルリン・フィルと日本公演を行なっており、世界の主要都市からの招聘が続いていていた、最も忙しい時期でもあった。

 

ウィーン直行便の再開

 

オーストリア航空は、昨年9月より運行を休止していた「成田~ウィーン線」を2018年5月16日より再開するとのニュースが飛び込んできた。

国土交通省への認可申請中とのことで、週5便(月・火・水・木・土曜日)が予定されているという。

https://twitter.com/Lufthansa_JP

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ボーイング777-200型機の運行予定である。

ザルツブルク・アニフ村への訪問が遠のいていたので、この夏一番の朗報である。

「暗黙の了解」の例外

カラヤンベルリン・フィルの第4代の常任指揮者であった期間、他の指揮者はベルリン・フィルを指揮して、ベートーヴェンブラームス交響曲を録音しないという「暗黙の了解」があった。

Kの韻を踏んで、"Kaiser - Karajan" と呼ばれ、(日本では「帝王カラヤン」の名を欲しいままにして)絶大な人気を博していた70年代以降は以降は言うまでもないが、60年代の初めにわずかな例外を指摘できるが、この「暗黙の了解」は守られ続けた。

反対にカラヤンベルリン・フィル以外のオーケストラを指揮するとき、(これは主にウィーン・フィルに限られていたわけだが)ベートーヴェンブラームス交響曲は演奏しないとの「暗黙の了解」があった。

カラヤンの晩年におけるウィーン・フィルとの演奏会、レコーディングにおいてブルックナーチャイコフスキーシューマンモーツァルトシューベルトドヴォルザーク交響曲が取り上げられたのはこのためである。

しかし、これも1984年に例外がある。

この年はベルリン・フィルとの軋轢が生じていて、ザルツブルク聖霊降臨祭、ザルツブルク音楽祭ルツェルン国際音楽祭ではウィーン・フィルブラームス交響曲第1番が演奏された。

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この写真は1984年6月11日、ザルツブルク聖霊降臨祭でウィーン・フィルブラームス交響曲第1番を指揮しているときのものである。

カラヤン 最後の映像

カラヤンは亡くなる5ヶ月ほど前に、ウィーン・フィルとニューヨークのカーネギーホールで3回の公演を行なった。

このニュース映像はこの時のもので、現在確認できるカラヤンの最後の映像と云うことになる。

わずか1分ほどの短い映像だが、眼光鋭く、両腕も高く振り上げて、ブルックナー交響曲第8番の第4楽章・終結部をリハーサルするカラヤンの勇姿を見ることが出来る。

【公開リハーサル音源】 ワーグナー/ジークフリート牧歌

 

1988年3月27日にザルツブルクイースター音楽祭後援会・会員向けに行なわれた公開リハーサルの音源、ワーグナージークフリート牧歌を確認した。

 この音源はオーストリア・第1ラジオで2014年7月に「カラヤン没後25年番組」として放送されたものである。

http://oe1.orf.at/programm/377251

通常の公開リハーサルでは、カラヤン自らマイクを持って客席の会員にわかりやすく、曲目を解説しつつリハーサルを行なうのだが、このジークフリート牧歌は一度も止めることなく全曲を通して演奏されている。

また、1987年4月12日には、この年の公開リハーサルが行なわれており、R.シュトラウス交響詩ドン・キホーテ」のリハーサル音源が存在する。

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この4枚の写真は、年次は判らないがイースター音楽祭での公開リハーサルのものである。

1988年のジークフリート牧歌が確認されたことで、カラヤンの生涯演奏会回数は3533回(幼少期のピアノ演奏会は除いて)となった。